民主主義の真価が問われたイギリス総選挙 これで離脱が確定 さすがは賢明な英国国民、そして議会制民主主義発祥の国!


イギリスの総選挙、保守党の圧倒的勝利で終わりました。

 

その理由の私なりの理解として、①保守党は明確にEU離脱を掲げたところ、国民は再度離脱の意思を示した、②対する労働党党首コービンの急進主義的社会主義政策がほぼ全否定された、ということかと思います。

なおこれは本日の豪州紙一面。さすがは親元イギリスの総選挙を大々的に報じています。

 

①については、すでに2016年の国民投票で明確に離脱の意思が示されていながら、それでも残留派がさまざまな妨害工作を行ったため、再度の「事実上の国民投票」を実施したところ、極めて明確に、再度英国国民はEUから離脱すべきという意思を示したといえます。

 

もっとも、この混乱には、国民投票後に首相に就任したメイが、2017年にわざわざ選挙に打って出て、保守党の過半数割れという大失態・自爆を演じたことが遠因ですが……

 

もしかすると残留のほうを支持していた人々も、「これ以上の混乱はやめてほしい」として、大局的観点からあえて保守党に票を投じ「白黒はっきりつけてほしい」ということを望んだのかもしれません。仮にそうであれば、本当に英国国民は賢明な人々です。さすがは議会制民主主義を生み出した国の国民であります。

 

我が国も相当遅ればせながら、英国的議会制民主主義・議院内閣制を導入していますが、その基盤を作ったイギリスには、今回の選挙結果を見るにつけて、我々日本国民も本当に最大限の敬意を払わなければならないでしょう。

 

②の急進的社会主義政策については、労働党・コービンが前面に掲げた富裕層へのさらなる課税強化による再配分、公共サービスの国有化といった、サッチャー時代以前の社会主義的政策です。旧ソ連の崩壊を見るまでもなく、社会主義自体が大失敗であったことは歴史が示しているのですが、近年、不満を抱える若年層において、「生きた記憶としての社会主義」はなく、ユートピア的幻想にとらわれている面もあるかもしれません。

 

確かに、新卒一括採用システムがない英国、米国、豪州での若年失業率は高く、個人的には同情する面もありますが、であるからといって社会主義を採用することで問題は解決しないどころか、さらに国全体の富が縮小するでしょう。少なくとも、英国国民は、それを(ごく一部を除いて)ほぼ全否定したといってもいいかもしれません。

 

加えて、コービンが、次期首相候補として、人物的に相当毛嫌いされていた面もあると言えます。二大政党制+議院内閣制の英国、豪州では、保守党党首と労働党党首はともに首相候補であり、投票はどちらかの党に対する投票であると同時に、どちらかの首相候補に対する投票も意味します。

 

もしかすると、必ずしも離脱支持ではないが、「コービンが首相になるのだけはやめてくれ」ということであえて保守党に投票した有権者も少なからずいたのかもしれません。議席数的には労働党は262議席から、なんと59議席も減らしています。離脱だけが争点であったならば、ここまでのぼろ負けにはなっていなかったのでは……

 

まとめますと、要するにすでにEU離脱については、2016年の国民投票で決着がついていた、残留派が妨害をしたけれども、所詮は2016年の国民の意思が再確認された、ということです。国民投票という極めて明確な民主主義的な国民の意思表示を守るのか、守らないのかという、「民主主義の真価」が問われたわけですが、まさに今回の選挙では、それが再確認されたといえます。民主主義を守り抜いた、とでもいうべきでしょう。

 

次に、それこそピケティの著作が出回るなど、先進国の極めて少数の一部で社会主義への期待(というか幻想?)が高まっているようですが、単にそれは一部にすぎず、それを前面に出した労働党・コービンの大敗に見られるように、広範な国民は一切支持していない、ということです。

 

今年5月の豪州選挙においても、労働党党首のショーテンが、コービンと同様の社会主義的政策、さらに急進主義的環境保護政策を掲げて、これも敗北しました。来年は米国大統領選挙ですが、民主党内で一部社会主義者がいるも、今のままで行くとトランプに勝つことはほぼ困難で、米国でも政権を取ることはほぼ不可能。

 

社会主義的政策というと、我が国でも「何とか新撰組」なる政党ができましたが、これも所詮は泡沫政党にすぎず、まかり間違っても政権内に入ることは不可能。(野党が野合すればありうるかもしれませんが、それもあり得ない)

よって、我が国を含む先進国の社会主義者たちは、絶対に政権を取ることは不可能で、場外から叫ぶだけの「ただ叫び隊」にすぎないわけです。ただメディアにもこうした人々が多いので、その叫び声だけは異様に大きいのですが……

これと関連して、面白いことに、本日の豪州紙のコラムニストのJanetさんが、残留派のことを「Remoaners」と表現していました(笑)

 

これは残留を意味するRemainと、叫ぶ、うめくを意味するmoanをかけて、人たちを意味するersをつけたもの。訳すと「それでも残留を叫ぶ人々」ということで、国民投票はもちろん、今回の総選挙においても明確に離脱という国民の意思が示されたにもかかわらず、それでも「残留、残留」と叫ぶ人たちのことで、彼らを痛烈に揶揄していますね(爆笑!)

 

例えがいいかどうかわかりませんが、多くの乗客がいる電車の中で、せいぜい数人が叫んで、周囲の大迷惑となっているといったところでしょうか?

 

いずれにしましても、今回の英国選挙、民主主義の真価が問われ、それが再確認されたという意味において、歴史的意味を持つものであり、賢明な判断をした多くの英国国民に対して最大限の敬意を払うべきといえるでしょう。勝手ながら、イギリス万歳!!! God Save the UK!!!


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