猛暑の名古屋も、昼間は暑いも、ようやく朝晩は何とか耐えれるぐらいになってきました。いわゆる「秋の夜長」ということで、思い出したように、大好きなスタートレック・ヴォイジャーの、第97回"Extreme Risk(心は闘いに傷ついて)を見ました。
ヴォイジャーは全172回ですが、30回ぐらい好きな回があり、この第97回もそのひとつです。英語で聞くのですが、なぜドラマは英語がきれいで知的なのです。特にスタートレックでは、日本語でもよくわからないような科学系の単語がよく出てくるというのもありますが、なぜ映画はあそこまで、キレイではないのか、と不思議に思います。
それはさておき、この回は、常に優秀で前向き、さらに攻撃的な機関主任のトレスがめげているというもの。その内容は邦題のとおりなのですが、むしろ英語のExtreme Risk(非常な危険)というところが興味深いのです。
三次元のシミュレーションが可能な「ホロデッキ」で、危険なゲームを行う際、あえて安全装置を外そうとし、コンピューターに「安全装置を外すことは、非常な危険(Extreme Risk)を伴う」と言われて、トレスは「解除せよ」という。それは、一種の自傷行為なのです。
では、なぜその自傷行為に走るのかというと、かつての組織の同志たちが皆殺しにあった中で、自分が生き残ってしまったことに対する罪悪感/絶望感が根底にあると設定されています。同じ船の彼氏のパリスが元気づけようとするも、それは心に届かない。男女関係も「絶望」に対しては無力なのかもしれません。
トレスの問題に気付いた艦長が、副長のチャコティに聞き取りを命じます。チャコティは、トレスと同じ組織にいた指導的役割の人物で、トレスが信頼を寄せている人物です。チャコティは「なぜ意図的に自分を傷つけるのか」とトレスに問うたところ、トレスは「わからない」と答えます。そしてチャコティは「自殺しようとしているのか」と問うたところ、トレスは「違う」と答えます。
そしてトレスは「自殺しようとしているのではない、まだ生きていることを確かめようとしている」といいます。それに対してチャコティは「分からない」と。トレスは「6歳で父がいなくなった、19歳で宇宙艦隊から追い出された、数年後、その組織から離れた、そして旧友たちが殺された。自分の持っているものすべてを失った」と説明します。
ここはドラマなので、トレスはヴォイジャーの危機的状況を解決することに貢献して、最後は立ち直るという設定です。まぁ絶望が続くだけでは、ドラマになりませんし(笑)
なお、イギリスの元首相であり、世界史に残る偉大な政治家でったチャーチルもうつ病か躁うつ病であったといわれており、その鬱を「黒い犬」と表現したそうです。この回では、トレスという人物における「黒い犬」が表現されたともいえるかもしれません。
私自身の経験からも、このことは、ものすごくよく分かると同時に、やはりドラマのように立ち直ることは、結構いや、非常に困難というべきかもしれません。「黒い犬」は追い払ったつもりでも、再びやってくる……ただ、その心理を表現したこの回は、何度見ても印象深いのです
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